2009年08月17日

いよいよ選挙公示

いよいよ選挙公示となります。とにかく皆さん、投票へは行きましょう!!今まで色々と書いてきましたが、最後に高野山で得度しました一僧侶として、特定政党に偏らず、いくつかの点に触れてみます。

(1)政党支持と宗教宗派支持のデータがほしい
アメリカでは二大政党支持者に対して、信仰する宗教宗派の統計調査がよく行われていますが、日本のマスコミではそのような世論調査が皆無です。むしろ政教分離の観点や戦前の国家神道政策批判の観点から、無宗教にマスコミは徹しているようです。アメリカのデータでは、共和党支持層にはカトリックが多いのが特徴(カトリックの6〜7割程度)です。また大統領などの指導者はもちろんプロテスタントですが、支持層のプロテスタント(約6割程度)も教会に行く頻度は民主党の倍くらいあります。一方、民主党であっても半数くらいはプロテスタントですし、アイルランドカトリックにはケネディ家のような民主党支持者が多いです。ただ民主党の特徴は、多民族性による他宗教(イスラム教、ネイティブアメリカン、仏教)やフリーメーソンが多いことです。一言で言うと、敬虔なプロテスタント、カトリックが共和党に多く、一般的なクリスチャンと様々な宗教宗派、無宗教が民主党に多いという統計データがあります。

アメリカなど西欧諸国での「政教分離」は、キリスト教国家であることを前提にしていることは、周知の通りです。大統領就任式では、牧師の持つ聖書の前で、新大統領は宣誓する場面をご覧になった方は多いと思いますし、大統領就任演説の内容もキリスト教的な言葉を用いることが多いですね。つまり、政治という俗世界の権力からキリスト教などの聖世界を保護しているのが、西欧諸国での「政教分離」の理念なのです。アメリカの場合は、他民族性から他の宗教も平等に保護されていますが、共和党と民主党で微妙なニュアンスの違いがあるようです。

日本における「政教分離」は、戦前の反省ということから捉える傾向が強く、日本人に宗教宗派のアンケート調査をしても「無宗教」と答える人が多いと思います。日本仏教の場合は、檀家名簿に国民のほとんどが所属しているとして、仏教徒は統計上1億人とされますが、「檀家」という言葉ではなくて「信仰」という言葉で、直接の聞き取り調査をすると、恐らく「仏教」と答える人は3割程度ではないでしょうか。一方、日本におけるキリスト教徒は約100万人(1%)で、カトリックとプロテスタントがだいたい半々です。これは明治以降変化していません。


現在では、僧侶=自民党ではないことは確かです。どちらかというと保守的な人が多い分野ですが、民主党支持層も増えてきましたし、伝統的な檀家とならない純粋な仏教好きの人も増えてきました。ぜひ、この機会に支持政党と信仰する宗教宗派の統計を試みてほしいものです。

(2)民族単一性とマスコミ
日本の過去には民族単一性(厳密には少数民族も日本にはいます)とマスコミの言論統制によって、大政翼賛会などの政治統制が行われた経験もあります。同一民族という共有感はあってしかるべきですが、これに対して、マスコミ論調が一つの方向に傾くことは、あまり好ましくないと思います。幸いにも言論機関として各新聞社の支持政党が分かれているのは、さまざまな角度からの視点を与えるので良いことだと思います。ただ悲しいかなTVについては、スポンサーや監督官庁のバイアスがかかったり、情緒的な内容が多いように思います。特に終戦記念日をまたいでの8月の選挙であるがためにTV番組が反戦物が多く、選挙に感情的な影響を与えてしまっているように感じます。

世界から武器や兵器がなくなり、戦争がなくなることは誰しも願っている理想ですし、世界で唯一の被爆国である日本の立場はとても大切であることには賛同しますが、その理想のためには、現実の政策はどうあるべきかということで、一呼吸して冷静に考えてほしいものです。平和を言うだけで戦争がなくなるほど、歴史は甘くはありません。人口増加と食料資源という冷酷な需給バランスから考えなくてはいけません。日本は、世界の中ではまだまだ豊かだと錯覚している人が多いのでしょうが(それもデータとしては事実ですが)、政策を誤ると数年後には貧困国になってしまうかもしれません。もし、あなたに明日の食料がなくなったらどうするでしょうか?そういう視点で世界平和のことを考えるのが冷静な視点だと私は思います。

(3)スポーツマンシップを忘れずに
日本人にはオリンピックなどのスポーツマンシップが普及しています。精一杯自分の力を出して、公正さとマナーを重視し、負けた相手を褒め称える精神です。これから日本が正しい二大政党制を歩むためには、ぜひスポーツマンシップを忘れずに選挙PRをしていただきたいものです。今回は加熱することが予想されますし、たとえ政策中心であっても、相手の政党を批判する論調も増えると思いますが、決して人としての道を踏み外さないことを期待しております。どちらが勝っても、それは国民自身が選んだ道ですから尊重しなければなりませんし、負ける候補者がいたとしても、その人に投票した多数の有権者の民意を切り捨てるようなこともあってはなりません。過半数を取れば何をしても良いというのが民主主義ではありません。この点だけは、ぜひ冷静に考えていただきたいと思います。

(4)用語の用い方に注意しましょう
今回の選挙を明治維新に例えるマスコミ論調は以前は盛んでしたが、最近では影をひそめました。政権交代は革命ではないことを理解し、マスコミが自粛していることは良いことだと思います。この文章の最初に「大政翼賛会」と書いてますが、このような戦中用語や戦後の学生運動用語などもできるだけ避けるべきだと思います。反戦に傾いた世論にもっと冷静になるように警告を鳴らしただけで、「反動勢力」とか「腐敗した権力者」とか「悪徳金持ち」というような固定観念を作るのは、まったく現実的ではありません。戦中用語やGHQ時代用語、学生運動用語を用いると、冷静な批判が固定した偏見を作ってしまうことには、慎重になりましょう!!

(5)男性原理と女性原理
実は今回の選挙は女性原理が大きく働いているように、私は思っております。子育ての問題や生活者の視点などが政策論争に用いられているからです。前回の選挙はそれには対照的で、男性原理が大きく働いたようにも思えます。選挙は夫婦喧嘩ではありませんが、家庭内の主導権が女性に移っている時代であることを反映しているのかもしれません。すなわち、共働き家庭が増えたにもかかわらず、女性の子育てが重視されているために、どうしても家庭での主役が女性になっている傾向があります。男性が子育ての中心となる家庭は日本では稀有です。また、男性の特徴としての能力が十分に機能していない経済状況もあるかもしれません。仕事そのものが、男性原理から女性原理に移行しているのかもしれません。

もうひとつ、忘れてはならないことは、単身者の増加の問題です。人口比率としてはかなりの割合を占める単身者の声が反映されている政策は少ないと言えます。実は日本の自殺者(年間3万人以上)の約8割程度は単身者だそうです。特に失業と熟年離婚が重なったケースが多いようです。男女比率では、男性が7割程度になるそうです。実は本当の悲劇は女性側ではなくて、男性側にあるのかもしれません。ここまで洞察して、報道しているマスコミはまだありません。やはり男性は我慢すべきものという古い道徳感だけは残存しているようです。マスコミが女性原理的な窮状ばかりを取り上げるのは、現実から少し遊離しているような気もします。

(6)日本とアメリカ
実は、今回の選挙の選択は、日本とアメリカのあり方に対する様々な考え方が背景にあるとも言えます。自民党政治を否定するということは、日米同盟を機軸に経済重視の道を歩んできたことから、新たな道を模索しようという国民感情の反映と見るのも、ひとつの視点のように思います。大リーグでのイチローや松井に熱狂しつつも、一方では国内のプロ野球は斜陽化していることに嘆く人もいます。外資ファンドをハゲタカ視して嫌悪しながらも、海外留学や海外勤務者が増えています。一方では鎖国的でありながら、一方では開国的な日本人という視点から見ると、日本人の複雑な精神構造が見えてきます。

郵政民営化見直しなどは鎖国的な民主党政策ですし、外国人参政権付与などは開国的な民主党政策です。また、FTA協定などは開国的な自民党政策ですし、農協との関係重視などは鎖国的な自民党政策です。

いくつか気になるのは、アメリカのオバマ人気にあやかりたいという心情が働いている点があります。先述したように、日本と米国の持つ諸条件、諸要素は大きく相違することが多いことを冷静に考えなければなりません。日本は日本なりの立場と特色を有することをしっかりと考えることはとても大切です。アメリカの真似をすればかっこいい、トレンドだというムード的感情は、当の米国人にとっては違和感があるようです。日本人好きなアメリカ人が多いのは、独自の文化や精神性を有することも忘れてはなりません。

日米関係については、軍事外交に傾きやすいですが、「相手の立場からの情報を知る」ことが肝要なことだと思います。今の米国人の多くは、日本はとても重要なアジアの同朋だと考えていることは確かなようですし、日本人の精神構造も気づかないうちにアメリカ人との距離が縮まっていることも確かなようです。だからこそ同じスタイルにするのか、だからこそ独自性を重視するのか、は各分野ごとに微妙な違いがあるので、多岐にわたってきめ細かく考えてゆくことが大切だと思います。少なくとも、古い用語や古い思考回路で偏見を抱くことは、避けたいものです。
posted by きんちゃんブログ at 01:50| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大切なことを言い忘れていました。
衆議院選挙の投票場では、同時に最高裁判所判事の国民審査があります。○×方式です。今回は、裁判員制度やDNT鑑定冤罪問題などに、国民として意志表示をする良い機会だと思いますので、各判事に関する履歴や情報を調べてみると良いと思います。
Posted by きんちゃん at 2009年08月18日 17:00
最高裁裁判官国民審査対象の裁判官

http://www.jdla.jp/kokuminshinsa/2009shinsa.html
Posted by きんちゃん at 2009年08月18日 17:19
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