私はもともと工学部出身でコンピュータプログラムの基礎教養は習ってきましたので、AIとの対戦やAIプログラム研究は違和感なく取り入れております。函館未来大学の松原仁先生(人工知能学会の前会長)の研究室の実験協力もしました。(指導碁におけるコミュニケーションの研究とのこと。)最近は教室の生徒にもAI対戦ソフトを貸したり贈ったりして、生徒の中にはAIとの対戦を練習に取り入れる子も出始めております。
現在市販のPC用AI囲碁対戦ソフトでは、天頂の囲碁バージョン6がアマチュア七段くらい、銀星最新版がそれよりやや強いというか、人間の感覚に近いという評価で、PC用AI囲碁はとても強いです。天頂の囲碁は昨年のコンピュータ囲碁大会で世界一になった日本製DEEP-ZEN碁の市販版ですが、今年は中国製の絶芸が世界一になりました。銀星はこの絶芸の簡易版です。つまりは、AI囲碁の大会では、中国対日本の壮絶な競争となっております。欧米ではCrazy Stoneが2014年世界一になっていますし、Facebook社も参入予定だそうです。それを遥かに凌駕するところに米国グーグル社のAI囲碁であるAlpha碁があるわけなんですが、もともとは囲碁専用ではなくして、自動運転など多用途のプログラムの実験として囲碁対局を試みたものですから、PC版の囲碁対局汎用品を出す予定もなく、また世界No.1の棋士を4連勝で破ったり、世界のトップ棋士たちに60連勝したりしたものですから、これ以上のプロ棋士との対戦イベントはしないそうです。ちなみにAlpha碁で使用するコンピュータの台数は一般ビルの3〜4フロアー分くらいになるそうですから、PC用市販版の規模とは違います。
さて、私と天頂の囲碁6との対局棋譜ですが、昨日、ついに互先にて勝利しましたので、記念に掲載致します。最初は3子で勝つことから始めて、2子でも勝てるようになり、先週についに先で勝ちました。互先では負ける目数を減らす戦法を見出す研究に没頭しました。対局を繰り返す中で、コンピュータの布石を色々試して形勢判断を繰り返し、あるいはコンピュータの大石を取ったりして(天頂の囲碁は時々大石が死ぬ弱点があります)、ついに勝利に至りました。紹介した棋譜では、最後に大石がコウになりましたが、ここをコンピュータが守ったとしても黒の私が10目ほど勝って終了します。つまりは、市販のPC用AI囲碁はクセがあるということです。Alpha碁にもクセや弱点があると言われていますが、こちらが研究するとあちらはケタ違いに早く学習しますので、弱点を見出して一回だけ勝つということができるかどうかは、かなり難しいように感じております。
つまりは、これからはAIからどう習うかというスタンスに変わるように感じております。もちろん、今の段階では反論も多々あるというか、むしろAI囲碁を上手に活用できる人はごく少数です。生徒の父兄からは、「良い人間関係を作り、人生を学ぶために囲碁を習わしているのに、なぜ子供が機械と対局する必要があるのですか?」、「家でTVゲームばかりしているからこそ、囲碁で人間同士で打たせたいんですよ。機械とやるんじゃ囲碁やる意味がないですよ。」という素朴な疑問を投げかけられることが多く、「その通りですね。」と言うしかありません。したがって、AIと人間の関係を模索して新しい道筋を創り出せるかどうか、それは多くはコミュニケーションのあり方かな、ということだと感じおります。
とにもかくにも、最強者を競うならばコンピュータに人間(プロ棋士といえども)が負ける時代になってしまった以上、プロであろうとアマであろうと、大学生であろうと小中高学生であろうと、最強者を競う競技大会では、コンピュータから教わった生徒が勝ってしまうという「藤井聡現象」が起きることは必定と考えられます。このことをどう捉えるかは、教育や育児の在り方とも関わりますので、まだまだ結論の出ない試行錯誤が続くと思います。
